現場の看護師はどうなっている?
新型コロナウイルスに感染し、入院措置となっている患者さんも少なくありません。しかし、有効な治療法やワクチンがなく対症療法しかできないため、多くの医療施設では院内感染が広がってきています。患者さんと接する機会が一番多いのが看護師ですが、感染リスクが高いだけではなく備品や人材が不足しているため現場では厳しい状況が続いています。
防護用品が不足している
新型コロナウイルスの患者さんを受け入れている医療施設では、感染を防ぐ防護用品が足りていません。一時期と比較すると大分調達できるようになったとはいえ、十分とはいい難い状況です。感染者が一気に増加した時は防護服が足りず、75リットルのビニールゴミ袋を代用したり、事務用品のクリアファイルをフェイスマスクに代用したりしていました。
看護師の配置をひっ迫化させている
人工呼吸器の装着を必要とする重症の患者さんが増えると、1人の患者さんに配置する看護師の数も変わります。例えば、集中治療室が10床の場合、常時24人配置だった看護師が人工呼吸器を装着した患者さんが増加すると倍の48人必要になります。また、患者さん全員が体外式膜型人工肺を付けた場合は72人配置しなければならないため、大幅な増員が必要になります。現場ではさまざまな調整を行い看護師を確保していますが、もともと看護師不足だった病院も多く、中には一般病棟を閉鎖して新型コロナウイルスの治療に専念しているところもあります。
こうした状況の中で懸念されているのが、現場の看護師のメンタルヘルスです。感染者と接する機会が多いため、自分や家族に感染するのではないかと不安に思っている人も少なくありません。また、妊娠中の看護師の中には出勤を反対する家族と看護職としての使命感、一緒に働いている仲間を想う気持ちと板挟みになり苦しんでいる人もいます。
医療従事者への差別と偏見
原因が不明なことや治療法が確立されていないことに対する強い不安が世間に蔓延し、その不安や恐怖が新たな問題を引き起こしています。それは看護師をはじめとした医療従事者に対する嫌悪や差別、偏見などです。特に患者さんと接する機会が多い看護師が風評被害を受けるケースが増えています。
看護師に向けられた差別と偏見の事例としてよく挙げられるのが、「看護師の子どもが保育園の登園の自粛を求められた」「看護師という理由でタクシーから乗車を拒否された」「感染症病床に勤務していることが夫の会社に知られ、夫が勤務先から休むようにいわれた」などです。このような差別や風評被害によって看護師を辞めてしまう人もいます。看護師の損失は医療崩壊につながるおそれがあるためこのような偏見はなくすべきですが、残念なことになかなか偏見がなくならず心を痛めている人がたくさんいます。